トルティージャ・デ・パタタス日本では「スパニッシュオムレツ」ともTortilla de patatas レシピ
tortilla de patatasトルティージャ・デ・パタタス

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トルティージャ・デ・パタタスは、じゃがいもと卵、それに玉ねぎで作る、厚みのある丸いオムレツです。スペインではバルのカウンターに大きな1枚が置かれ、切り分けてつまむ定番の軽食です。日本では「スパニッシュオムレツ」の名前で知られています。
おいしさの決め手は、じゃがいもをたっぷりのオリーブオイルで、揚げるのではなく煮るように柔らかくすることです。卵液に浸してなじませてから焼き、切ると中がとろりとする半熟に仕上げます。
トルティージャ・デ・パタタスとは
スペイン語のつづりは「tortilla de patatas」で、「じゃがいものトルティージャ」という意味です。トルティージャは「トルタ(平たく丸いもの)」に小ささを表す語尾がついた言葉で、スペインでは卵を焼いたオムレツを指します。メキシコの「トルティーヤ」は、とうもろこしの粉などを薄くのばして焼いた生地のことで、もとは同じ言葉ですが、まったく別の食べものです。「トルティージャ・エスパニョーラ(スペインのトルティージャ)」とも呼ばれます。
いつ、どこで食べるか
スペインでは地域を問わず、家庭でもバルでも食べられています。バルでは切り分けたものがタパス(小皿料理)や、パンにはさんだボカディージョ(バゲットのサンドイッチ)になります。温かいままでも冷めてからでも食べられ、残ったものは温め直すより冷たいまま食べるほうがよい、とするスペインのレシピもあります。
由来の説
じゃがいもは、スペイン人が南米に渡ってから知った作物です。トルティージャ・デ・パタタスの起こりには、いくつかの説があります。
よく知られている伝承では、第一次カルリスタ戦争(スペインの王位継承をめぐる内戦)のさなか、カルロス派の将軍トマス・デ・スマラカレギがビルバオを包囲していたとき、飢えた兵士たちが近くの畑のじゃがいもと農家の卵を合わせて食べたのが始まりとされています。スペインの新聞エル・ノルテ・デ・カスティージャの記事は、これを伝説として紹介し、1835年のこととする記録もあるとしたうえで、ほかにもっと文書の裏付けがありそうな説がある、としています。
同じ記事は、1817年にナバーラの議会(コルテス)に宛てられた作者不明の文書「メモリアル・デ・ラトネーラ」も紹介しています。山あいの農民の貧しい暮らしを訴えた文書で、卵2〜3個のトルティージャを5〜6人で分ける、女たちは少ない卵にじゃがいもやパンのかけらなどを混ぜて大きく厚く作るのが上手だから、という内容の記述があります。
一方、歴史家のハビエル・ロペス・リナヘは、じゃがいもの歴史についての著書で、このトルティージャが文書に現れる最初の例はエストレマドゥーラ地方のビジャヌエバ・デ・ラ・セレナにあるとしています。スペインの新聞エル・デバテの記事によると、手がかりは1798年に同地の司祭が書いた「じゃがいものパンについての手紙」で、はじめはじゃがいもで作るパンのようなものだったかもしれないとされています。どの説が正しいかは決まっていません。
玉ねぎを入れるか、入れないか
スペインでは、玉ねぎを入れる「コン・セボージャ(con cebolla)」と、入れない「シン・セボージャ(sin cebolla)」のどちらがよいかが、よく話題になります。料理家カルロス・アルギニャーノの「卵6個、じゃがいも3個、玉ねぎ1個」という割合のように、玉ねぎを入れる人もいれば、ガリシア地方のベタンソスのように、町のトルティージャのコンテストで玉ねぎ入りを認めていないところもあります。
この記事では、玉ねぎを入れる作り方を紹介します。じっくり煮た玉ねぎが甘みと水分を足して、冷めてもしっとりした仕上がりになるからです。玉ねぎを入れない作り方は、後半の「地域による違い」で紹介します。
トルティージャ・デ・パタタスのレシピ:材料(直径20cmのフライパン1枚(4人分))
準備 25分(じゃがいもを水にさらす時間と、卵液に浸して休ませる時間を含む)調理 40分難しさ ふつう
じゃがいもと玉ねぎを油で煮る
- じゃがいも(メークインか男爵いも)皮をむいて500g(中4個)
- 玉ねぎ150g(小1個)
- オリーブオイル(煮たあとの油は手順6・7でも使う)(Amazon)400ml
- 塩4g(小さじ2/3)
卵液
- 全卵5個(Mサイズ・殻なし約250g)
- 塩2g(小さじ1/3)
作り方
じゃがいもと玉ねぎを切る
じゃがいもの皮をむき、縦に4つに切ってから、端から厚さ2〜3mmに切る。水に5〜15分さらしてざるにあげ、ふきんで包んで水気をしっかりふき取る。玉ねぎは縦半分に切り、繊維に沿って厚さ2〜3mmに切る。
玉ねぎを先に煮る
鍋にオリーブオイル400mlと玉ねぎを入れて中火にかける。玉ねぎの周りから細かい泡が出てきたら弱火にし、ときどき混ぜながら10分煮る。玉ねぎがしんなりして透き通ってきたらよい。色づきはじめたら火を弱める。
じゃがいもを加えて煮る
じゃがいもを加え、塩4gを振る。弱めの中火にし、じゃがいもの周りから小さな泡が静かに上がる状態を保って、ときどき木べらで上下を返しながら15〜20分煮る。泡が大きく勢いよくなったり、じゃがいもに焼き色がつきはじめたりしたら火を弱める。じゃがいもが木べらで押すとほろりと崩れ、ほとんど色づいていなければ火を止める。
油を切って冷ます
ボウルにざるを重ね、じゃがいもと玉ねぎをあけて5分ほどおき、油を切る。手で触れられるくらいの温かさまで冷ます。落ちた油から手順6・7で使う分を取り分ける。
卵液に浸して休ませる
大きめのボウルに全卵5個と塩2gを入れ、白身を切るように混ぜて溶きほぐす(泡立てない)。じゃがいもと玉ねぎを加えて混ぜ、木べらでじゃがいもの3分の1ほどを軽くつぶす。そのまま5分おく。
片面を焼く
直径20cmのフライパンに手順3の油15mlを入れて中火〜強めの中火で1分ほど温める。油の表面がゆらめき、卵液を1滴落とすとすぐにジュッと固まれば、卵液を一度に流し入れる。最初の20〜30秒はフライパンをゆすりながら木べらで全体を大きく2〜3回混ぜ、縁を内側へ寄せて丸く形を整える。弱めの中火にして2〜4分焼く。フライパンを前後にゆすると全体がひとかたまりで動き、縁から1cmほどが固まっていれば返しどき。
皿を使ってひっくり返す
火を止め、流しの上で行う。両手に鍋つかみをはめ、平皿を裏返してフライパンにかぶせ、片手で皿の中央をしっかり押さえ、もう片方の手でフライパンの柄を持つ。ためらわずに一気に手首を返して、フライパンと皿の上下を入れ替える。フライパンを持ち上げ、皿にトルティージャが移ったことを確かめる。フライパンを火に戻して手順3の油5mlをなじませ、焼き色のついた面を上にして、皿からすべらせるようにフライパンへ戻す。
裏面を焼いて休ませる
木べらで縁を内側へ押し込んで丸く整え、弱めの中火で1〜2分焼く。中央を木べらの背で軽く押して、ぷるんと揺れるが卵液がにじみ出ない程度が半熟の目安。しっかり固めたいときは弱火で3〜4分焼き、中央を押しても揺れなくなるまで焼く。返すのに使った皿ではなく、清潔な盛りつけ用の皿にすべらせて取り出し、5分おいてから切り分ける。
切り分けて、カフェ・コン・レチェ(ミルクたっぷりのコーヒー)と一緒に朝や昼前に食べるほか、タパスとしてよく冷えたビールやワインにも合わせます。
料理科学:じゃがいもを多めの油で煮るように火を通す理由
中まで柔らかく、表面は固めない
じゃがいもの細胞には、デンプンの粒がぎっしり詰まっています。じゃがいもを加熱すると、60℃台からデンプンの粒が水を吸ってふくらみ、のり状になります(糊化)。さらに100℃近くでしばらく加熱すると、細胞どうしをつないでいるペクチンがゆるんで、ほろりと崩れる柔らかさになります。
油の中に入れても、じゃがいもの中には水分があるので、中の温度は100℃前後までしか上がりません。ところが油の温度が高すぎると、表面だけが先に乾いて固い膜ができ、焼き色がつきます。スペインの消費者向けの情報誌コンシューマーも、油が熱すぎると外は色づくのに中は生のまま、冷たすぎると油を吸いすぎる、としています。
手順3で小さな泡が静かに上がる状態を保ち、15〜20分かけるのはそのためです。表面を焦がさずに、中まで糊化と軟化を進めます。揚げ物の油(170〜180℃)よりずっと低い温度です。スペインではこの火の通し方を「コンフィタール(油で煮る)」や「ポチャール(弱火で柔らかくする)」と呼びます。油を多めにし、ときどき上下を返すのは、じゃがいもに均一に火を通し、鍋肌に当たったところだけ焦げるのを防ぐためです。
水にさらして、水気をふき取る
手順1でじゃがいもを水にさらすのは、切り口のデンプンを洗い流して、油の中でじゃがいもどうしがくっつきにくくするためです。そのあと水気をしっかりふき取るのは、水が熱い油に入るとはねて危ないからです。
料理科学:卵液に浸して休ませる理由と、半熟の固まり方
浸して休ませると、じゃがいもと卵がひとつになる
煮たじゃがいもを卵液に入れて5分おくと、柔らかくなったじゃがいもの表面に卵液がなじみ、つぶしたじゃがいもが卵液に混ざって全体にとろみがつきます。焼いたときに卵液とじゃがいもが分かれず、ひとつにまとまるので、ひっくり返しても割れにくくなります。
ただし、じゃがいもが熱すぎると、卵液がその場で固まりはじめて、焼き上がりが乾いた感じになります。手順4で手で触れられる温かさまで冷ましてから卵液に入れるのはそのためです。卵を泡立てないのも同じ理由で、泡を含んだ卵液は早く固まり、しっとりしにくくなります。
半熟は「70℃前後」の手前で止める
卵のたんぱく質は、種類によって固まる温度が違います。卵白は60℃を少し超えたあたりから固まりはじめ、卵黄は65〜70℃前後でとろみがつきます。溶いた全卵は70℃前後でとろりとし、80℃を超えると締まって固くなり、さらに加熱を続けると水分が押し出されて、ぼそぼそした食感になります。
半熟のトルティージャは、縁と表面はしっかり固め、中心はとろりとした状態で火を止めたものです。フライパンから出したあとも、余熱で中心の温度は少し上がります。手順8で5分おくのは、余熱で中心を落ち着かせ、切ったときに卵液が流れ出さないようにするためです。好みの固さより少し手前で火を止めてください。
安全のために
- 熱い油を扱うときは、じゃがいもの水気をよくふき、火のそばを離れないでください。油と具で鍋がいっぱいにならないよう、深さのある鍋で煮ます。手順4で油を切るときは、ざるとボウルを安定した場所に置きます。
- ひっくり返すときは、必ず火を止め、鍋つかみを使って流しの上で行います。フライパンも皿も熱くなっています。
- 半熟の卵には、サルモネラ菌による食中毒の心配が残ります。マドリード州の保健当局は、中心が70℃で2秒、または63℃で20秒に達する加熱を飲食店の基準としています。半熟のトルティージャの中心は、この温度に届かないことがあります。同じ当局は、とくに夏は卵をしっかり固めることと、妊娠中の人、高齢の人、小さな子ども、免疫の弱い人には半熟のものを出さないことを勧めています。こうした人が食べるときは、手順8で中央が揺れなくなるまで焼いてください。
- 返すのに使った皿には生の卵液がついています。同じ当局も、その皿のまま出さないよう注意しています。盛りつけには別の清潔な皿を使ってください。
地域による違い
玉ねぎを入れない作り方(シン・セボージャ)
材料から玉ねぎを除き、じゃがいもを600gにします。手順2は行わず、オリーブオイル400mlを中火で温めて、じゃがいもを1切れ入れて細かい泡が出るようになったら、じゃがいもと塩4gを入れて手順3から進めます。じゃがいもと卵とオリーブオイルの味がまっすぐに出ます。
ベタンソス風(とろとろの半熟)
ガリシア地方の町ベタンソスのトルティージャは、中がほとんど生に近いほど柔らかく焼くことで知られています。町役場が開く歴史あるトルティージャのコンテストでは、2018年に初めて、玉ねぎを入れたものは参加できないことが規定に書かれました。町の伝統では、材料はじゃがいも、油、卵、塩だけとされています。
スペインの新聞エル・エスパニョールのベタンソス風のレシピでは、じゃがいもを1〜3mmに薄く切り、180℃前後の油で、ところどころ色づくくらいまで揚げます。卵には全卵のほかに卵黄を足し、とても弱い火で片面45秒ずつだけ焼きます。家庭で近づけるには、玉ねぎを入れない作り方で、じゃがいもを薄く切り、手順6を1分、手順8を30秒〜1分にして、中心がまだ液体に近いうちに取り出します。卵がほとんど生の状態で食べることになるので、新鮮な卵を使い、上の「安全のために」にあげた人は避けてください。
手に入りにくい材料の代用
この料理の材料は、どれも日本のスーパーで手に入ります。
- オリーブオイル:スペインのレシピでは、エクストラバージンのほか、くせの少ない精製したオリーブオイル(日本ではピュアオリーブオイルの名前で売られています)や、ひまわり油を使うものもあります。エクストラバージンは香りが強く、ピュアオリーブオイルやひまわり油はじゃがいもの味が前に出ます。
- じゃがいも:スペインのレシピでは、モナリザやケネベックという品種が勧められています。日本で手に入りやすい品種なら、煮くずれしにくいメークインはじゃがいもの形が残りやすく、男爵いもは崩れやすいぶん卵となじみやすくなります。
失敗したときは
- じゃがいもがカリッとして、卵となじまない:手順3の油の温度が高すぎました。泡が勢いよく出たり、焼き色がついたりしたら火を弱めます。
- ひっくり返すときに割れる・崩れる:返すのが早すぎて、底と縁が固まっていなかったのが主な原因です。フライパンをゆすって全体がひとかたまりで動くまで待ちます。卵液に浸さずにすぐ焼くと、じゃがいもと卵が分かれて割れやすくなります。
- フライパンにくっつく:手順6で油とフライパンの温め方が足りませんでした。卵液を1滴落として、すぐに固まるのを確かめてから流し入れます。表面が傷んだフライパンも、くっつく原因になります。
- 中までぼそぼそに固い:焼きすぎか、卵液に入れたときのじゃがいもが熱すぎたのが原因です。手順8は1〜2分で取り出して余熱で仕上げ、手順4ではじゃがいもを手で触れられる温かさまで冷まします。
保存
焼きたてから室温に冷めたくらいが食べごろで、作ったらすぐに食べるのがいちばんです。
- 冷蔵:すぐに食べない分は、ラップで包んで冷蔵庫に入れます。マドリード州の保健当局は、作ってから2日を過ぎたものは捨てるよう勧めています。半熟に焼いたものは作り置きせず、すぐに食べて、残ったものは捨ててください(同じ当局の勧め)。
- 食べるとき:冷蔵したものは、温め直すより冷たいまま食べるか、パンにはさんでボカディージョにします。
もっと知りたい人へ
出典
- El Español(Cocinillas)「Tortilla de patatas con cebolla, videorreceta con todos los trucos」(スペイン語)
- ¡HOLA!「Tortilla de patatas: la receta que siempre sale bien」(スペイン語)
- Directo al Paladar「Tortilla de patatas con cebolla: receta tradicional española paso a paso」(スペイン語)
- Consumer(Fundación Eroski)「Trucos para hacer una tortilla de patatas perfecta」(スペイン語)
- El Español(Cocinillas)「Tortilla de patata al estilo de Betanzos, la receta en vídeo para no fallar」(スペイン語)
- Directo al Paladar「Betanzos prohíbe oficialmente la cebolla en su célebre tortilla de patatas」(スペイン語)
- Directo al Paladar「La regla 6-3-1 de Karlos Arguiñano para hacer la tortilla de patatas perfecta」(スペイン語)
- El Norte de Castilla(紙面のPDF)「El arte de la tortilla española」(スペイン語)
- El Debate「El origen de la tortilla de patatas: ¿dónde y cuándo se inventó?」(スペイン語)
- Vozpópuli「Día de la Tortilla de Patatas: historia, origen y por qué se celebra el 9 de marzo」(スペイン語)
- Comunidad de Madrid「Precauciones con las tortillas」(スペイン語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。