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ティラミスTiramisù レシピ

tiramisùティラミス

種類
デザート
地域
イタリア(ヴェネト(トレヴィーゾ))
分量
20×27cmのバット1台(8人分)
難しさ
やさしい
公開
青と白のチェックの布をかけた木のテーブルに、白い耐熱皿のティラミス。表面は濃いココアで覆われ、ひと切れ取り出した跡からコーヒーを含んだサヴォイアルディとマスカルポーネのクリームの層が見える。手前の小皿にひと切れ、奥に直火式のエスプレッソメーカーとカップ

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ティラミスは、コーヒーを含ませたビスケットと、卵黄・砂糖・マスカルポーネのクリームを重ね、ココアを振って冷やすイタリアのデザートです。オーブンもゼラチンも使いません。泡立てて、混ぜて、重ねて、冷やすだけでできあがります。

ここでは、北イタリアのトレヴィーゾで「元の形」とされている、酒を入れない配合で作ります。材料は6つです。マルサラ酒やリキュール、泡立てた卵白や生クリームを入れる形は、後半で紹介します。

ティラミスとは

イタリア語のつづりは tiramisù です。「tira mi su」は「私を引き上げて」、つまり「元気づけて」という意味です。トレヴィーゾの方言では「ティラメス(Tiramesù)」と呼ばれます。

トレヴィーゾの Le Beccherie 説

よく知られているのは、ヴェネト州トレヴィーゾのレストラン「Le Beccherie(レ・ベッケリエ)」で生まれたという説です。店によると、始まりは1955年です。経営者のアルバ・カンペオルが息子のカルロを身ごもっていたころ、義母が「スバトゥティン」を作ってくれたと伝えられています。卵黄と砂糖を泡立てた滋養のある一品に、コーヒーを合わせたものです。

その記憶をもとに、アルバは店の菓子職人ロベルト・リングアノット(通称ロリ)と試作を重ねました。店の説明では、1971〜72年に形が決まり、1972年に店のデザートの品書きに載ったとされています。2021年に93歳で亡くなった夫のアド・カンペオルと夫妻で考えた、と書く記事もあります。

トレヴィーゾの食文化研究家ジュゼッペ・マッフィオーリは、1981年にワインと食の雑誌『Vin Veneto』でこのデザートを取り上げました。学校向けの教材によると、マッフィオーリは1983年の著書『La cucina trevigiana』で、Le Beccherie のティラミスを正統なものとして紹介しています。2010年には、イタリア料理アカデミー(Accademia Italiana della Cucina)のトレヴィーゾ支部の会員3人が、作り方の調査を公証人の証書として残しました。

トレヴィーゾの中にも別の説があります。1960年代のはじめに、レストラン「Il Camin」のスペランツァ・ボン・ガラッティが、似たデザートを出していたという話です。

フリウリ=ヴェネツィア・ジュリアの説

隣のフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州にも、もっと古いとする説があります。

  • トルメッツォ説:レストラン「Roma」のノルマ・ピエッリが、マスカルポーネを使った菓子を作っていたとされます。19世紀の料理書の著者アルトゥージの「ドルチェ・トリーノ」(649番のレシピ)を作り替えたもの、と伝えられています。1959年の勘定書や、1960年代の夕食会の記録に、似た名前が出てくるとされています。
  • ピエリス説:コゾロ家のレストラン「Il Vetturino」の「コッパ・ヴェットゥリーノ」が原型だとする説です。料理ジャーナリストのジジ・パドヴァーニとクララ・ヴァーダ・パドヴァーニ夫妻が、著書で紹介しました。マルサラ酒を含ませたスポンジ生地、ザバイオーネ、ココアを混ぜた生クリームを器に重ねる形で、マスカルポーネは使いません。

一方、カルロ・カンペオルは、クリームはマスカルポーネで作るもので、泡立てた卵白は入れないと話しています。

2017年の伝統食品リストと、その後

2017年、イタリアの農業政策省の決定で、ティラミスがフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の「伝統的な農産加工品(PAT)」のリストに加わりました。ヴェネト州のルカ・ザイア知事はこれに強く反発し、イタリアで大きく報じられました。

「Accademia del Tiramisù」という団体もあります。Le Beccherie によると、この団体は2019年に同店を「本物のトレヴィーゾのティラミスが生まれた店」と認めました。また同店の資料は、2024年にヴェネト州のPATリストにも加えられたとしています。

どちらが先かは、記録の読み方で答えが変わります。この記事では、どちらかに決めることはしません。

元の配合と、いまの家庭の作り方

Le Beccherie の配合とされるものは、卵黄・砂糖・マスカルポーネ・サヴォイアルディ・コーヒー・ココアの6つだけです。サヴォイアルディは、イタリアの軽いフィンガービスケットです。酒も卵白も入りません。

イタリアの家庭のレシピでは、泡立てた卵白や生クリームを足して軽くしたり、コーヒーにマルサラ酒を加えたりする形もよく見られます。この記事では、6つの材料だけで作ります。

砂糖の量は、情報源によって大きく違います。イタリアの料理メディア「Dissapore」が Le Beccherie で取材した分量では、マスカルポーネの重さの半分が砂糖です。一方、学校向けの料理の教材で元のレシピとして紹介されている配合では、卵黄1個につき砂糖大さじ1.5です。この記事では後者の割合を基にしています。なお、その教材ではコーヒーを軽く甘くしていますが、この記事では砂糖を入れずに使います。

イタリアでは、昼や夜の食事のあとのデザートとして食べます。

ティラミスのレシピ:材料(20×27cmのバット1台(8人分))

準備 6時間30分(冷やす6時間を含む)調理 なし(冷やす6時間〜一晩)難しさ やさしい

マスカルポーネのクリーム

  • 卵黄(生食用の新鮮な卵から)5個分(Mサイズ・約90g)
  • グラニュー糖(Amazon|楽天)100g
  • マスカルポーネ(冷蔵庫から出したての冷たいもの)(楽天)500g

組み立て

  • エスプレッソ(砂糖を入れずに淹れて冷ましたもの)(Amazon)300ml
  • サヴォイアルディ(イタリアのフィンガービスケット)(Amazon|楽天)250g(約30本)

仕上げ

  • ココアパウダー(砂糖や粉乳の入っていない純ココア)(Amazon|楽天)12g(大さじ2)

道具

  • ハンドミキサー(Amazon)
  • マキネッタ(直火式のエスプレッソメーカー)(エスプレッソを淹れる。なければ下の代用の節を参照)(Amazon|楽天)
  • バットまたは耐熱皿(約20×27cm・深さ5cm以上)(楽天)
  • 茶こし(ココアを振るため)(楽天)
  • デジタルスケール(Amazon|楽天)
  • 料理用温度計(卵黄を加熱して作るときに使う)(Amazon|楽天)

作り方

  1. コーヒーを冷ます

    エスプレッソ300mlを砂糖を入れずに淹れ、浅い器に移す。室温まで冷ましてから、冷蔵庫で冷たくしておく。熱いままだとサヴォイアルディが崩れやすく、クリームもゆるむ。

  2. 卵黄と砂糖を泡立てる

    ボウルに卵黄5個分(約90g)とグラニュー糖100gを入れ、ハンドミキサーの高速で4〜6分泡立てる。白っぽいクリーム色になってかさが増え、持ち上げて落とした生地がリボン状に重なり、跡が2〜3秒残れば泡立て終わり。砂糖のざらつきが指先に残らないことも確かめる。

  3. マスカルポーネを混ぜる

    冷たいマスカルポーネ500gを3回に分けて加える。1回目は低速で10〜20秒混ぜ、なじませる。2回目と3回目はゴムべらで底から返すように混ぜ、むらがなくなったらすぐ止める。つやのあるなめらかなクリームになり、すくうと角がやわらかく倒れるくらいが目安。混ぜすぎると分離して、ぼそぼそしてくる。

  4. 1段目を作る

    サヴォイアルディを1本ずつコーヒーにくぐらせ、片面1〜2秒ずつ、両面を浸す。中心に乾いた芯が少し残るくらいでよい。バットの底に15本ほどすき間なく並べ、長さが合わないところは割って埋める。クリームの半量をのせ、ゴムべらで端まで平らに広げる。

  5. 2段目を作る

    残りのサヴォイアルディを同じようにコーヒーにくぐらせ、1段目のクリームの上に並べる。残りのクリームをのせて平らにならす。

  6. 冷やす

    ラップがクリームの表面に触れないようにふんわりかけ、冷蔵庫(2〜6℃)で6時間〜一晩冷やす。スプーンを入れたときに層の形が保たれ、クリームが流れ出さなければ食べごろ。

  7. ココアを振る

    食べる直前にココアパウダー12gを茶こしで全体にむらなく振る。スプーンか、温めたナイフで切り分ける。

食後のエスプレッソを小さなカップで添えると、よく合います。

料理科学:卵黄を泡立て、マスカルポーネは混ぜすぎない

卵黄と砂糖を泡立てる理由

卵黄には、たんぱく質と、油と水をつなぐレシチンが含まれています。砂糖と一緒に泡立てると、細かい空気の泡が、これらの成分に包まれて安定します。そのため白っぽく、ふんわり重く、リボン状に落ちる生地になります。

砂糖は、泡立てるあいだに卵黄の水分に溶けて、とろみを強めます。ここで十分に泡立てておくと、そのあと重いマスカルポーネを混ぜても、クリーム全体が軽く仕上がります。砂糖のざらつきが残っていると、冷やしたあとも舌に粒が残ります。

マスカルポーネが分離する理由

マスカルポーネは、生クリームを温めて酸で固め、水分を切って作るチーズです。脂肪をたっぷり含み、脂肪の粒がぎっしり詰まっています。

泡立てすぎた生クリームがバターのように分かれるのと同じで、強く長く混ぜると脂肪の粒どうしがくっつき、ぼそぼそと分離します。マスカルポーネが温まって脂肪がやわらかいほど、分離は早く進みます。冷たいまま使い、むらがなくなったらすぐ混ぜるのを止めるのはそのためです。

イタリアの菓子職人クラウディオ・ピストッキは、マスカルポーネは卵と触れると溶けてクリームをゆるくしやすいので、まず卵の一部となじませてから残りを合わせるようにすすめています。この記事でマスカルポーネを3回に分けて少しずつなじませるのも、クリームをゆるくしないための工夫です。

コーヒーにくぐらせる時間

サヴォイアルディは、卵を泡立てた生地を乾くまで焼いた、すき間の多いビスケットです。液体に浸すと、すき間からすぐに吸い込みます。

浸しすぎると、自分の重さで崩れたり、余ったコーヒーがバットの底にたまって水っぽくなったりします。参考にしたイタリアのレシピには、さっと浸す、浸しすぎない、とあるだけで、秒数は書かれていません。この記事では片面1〜2秒ずつを目安にして、中心に乾いた芯が少し残るくらいで止めます。冷やすあいだに、クリームの水分とコーヒーが芯まで移り、全体がしっとりそろいます。

冷やすと落ち着く理由

マスカルポーネの乳脂肪は、冷蔵庫の温度では多くが固まった状態になります。冷やすとクリームが締まって、切り分けても形が保たれるようになります。

同時に、ビスケットの層とクリームの層の水分が行き来して、境目がなじみます。作ってすぐはクリームがゆるく、層が崩れやすくなります。参考にしたイタリアのレシピでは2時間以上から数時間冷やしますが、この記事では層をしっかり落ち着かせるため、6時間〜一晩を目安にしています。

生卵について

このレシピは、卵黄を加熱せずに使います。殻にひびのない、生で食べられる期限内の新鮮な卵を使ってください。

妊娠中の人、小さな子ども、高齢の人、体調のすぐれない人が食べるときは、生の卵は避けるか、次の方法で卵黄を加熱してください。

卵黄を湯せんで加熱する方法

ハロルド・マギーの『On Food and Cooking』は、卵の菌は加熱で減らせること、卵黄は砂糖を混ぜると固まる温度が上がることを説明しています。砂糖を混ぜた卵黄は、かき混ぜ続ければ70℃前後まで温めてもなめらかなままです。下の温度と時間はこの記事での目安で、生の卵の心配を完全になくすと言い切れるものではありません。

  1. 手順2のボウルに卵黄5個分と砂糖100gを入れて、軽く混ぜます。
  2. 底を、80〜90℃(鍋の底から小さな泡が出始めるくらい)の湯を張った鍋に当てます(湯せん)。
  3. ハンドミキサーの低速で混ぜ続けます。料理用温度計で70℃に届いたら、さらに1分混ぜて湯せんから外します。目安は5〜8分です。
  4. 高速に切り替え、ボウルが冷めて生地がリボン状になるまで5分ほど泡立てます。ボウルの底を氷水に当てると早く冷えます。
  5. 完全に冷めたら、手順3に進みます。

ボウルの縁の卵黄は固まりやすいので、ゴムべらでときどき払います。イタリアの料理メディアでは、121℃に煮詰めた砂糖のシロップを、泡立てている卵黄に細く注いで加熱する方法も紹介されています。菓子の世界ではパータ・ボンブと呼ばれる作り方です。

地域による違い

  • マルサラ酒やリキュールを入れる形:Dissapore の「完璧なレシピ」の企画では、エスプレッソ4・水2・マルサラ酒1の割合の液にビスケットを浸しています。フリウリのコッパ・ヴェットゥリーノも、マルサラ酒をスポンジ生地に含ませ、ザバイオーネにも加えます。アルコールは加熱しないとそのまま残るので、子どもや車を運転する人が食べるものには入れないでください。
  • 泡立てた卵白を入れる形:Dissapore の家庭向けのレシピでは、卵白を角が立つまで泡立てて、最後に切るように混ぜます。軽くふんわりしますが、そのぶん形は崩れやすくなります。
  • 生クリームを入れる形:イタリアの料理家のサイト「Tavolartegusto」では、マスカルポーネ250gに対して生クリーム200gを泡立てて加え、クリームを軽くします。
  • 器に重ねる形:ピエリスのコッパ・ヴェットゥリーノは、四角い型ではなく、器に一人分ずつ重ねる形です。この記事の材料をグラス8個に分けて重ねてもかまいません。

手に入りにくい材料の代用

  • マスカルポーネ:国産品と輸入品があり、固さや口当たりが少しずつ違います。どちらでも作れます。クリームチーズで代用すると酸味と塩気が強く、別のお菓子になります。
  • サヴォイアルディ:輸入食品店やネット通販で、イタリア産の袋入りが買えます。フランスのビスキュイ・ア・ラ・キュイエール(同じ種類のフィンガービスケット)でも代用できます。手に入らなければ、コッパ・ヴェットゥリーノにならって、スポンジケーキを厚さ1.5cmに切って使います。スポンジケーキはコーヒーを吸いやすいので、浸すのは片面1秒にします。
  • エスプレッソ:マキネッタ(直火式のエスプレッソメーカー)で淹れたコーヒーで十分です。ない場合は、インスタントのエスプレッソを袋の表示どおりに溶いて300ml用意します。普通のドリップコーヒーを使うなら、深煎りの豆で濃いめに淹れます。
  • ココアパウダー:砂糖や粉乳の入っていない純ココアを使います。調整ココア(飲み物用)は甘く、湿りやすいので向きません。

失敗したときは

  • クリームがゆるく、切ると流れる:卵黄の泡立てが足りなかったか、冷やす時間が短かったことが原因です。卵黄は、リボン状に重なるまで泡立てます。冷やす時間は、6時間を目安にとります。
  • クリームがぼそぼそ・ざらざらになった:マスカルポーネの混ぜすぎか、マスカルポーネが温まっていたことが原因です。冷たいまま加え、むらが消えたところで止めます。
  • 底に水分がたまり、ビスケットが崩れた:コーヒーに浸しすぎたことが原因です。片面1〜2秒を目安にして、芯を少し残します。コーヒーが熱いままでも崩れやすくなります。
  • ココアが湿って黒っぽくなった:振ってから時間がたち、クリームの水分を吸ったためです。ココアは食べる直前に振ります。

保存

  • 冷蔵:ラップをかけて2日以内に食べきります。生の卵黄を使っているので、室温に長く置かないでください。
  • 冷凍:参考にしたイタリアの情報源には冷凍についての記載がないため、この記事では冷蔵で食べきる形をすすめます。
  • 余った卵白:保存容器に入れて冷蔵で2日、冷凍で1か月ほど保存できます。

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。