エッグ・ベネディクトEggs Benedict レシピ
Eggs Benedictエッグズ・ベネディクト

この記事はAmazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンクを含みます。
エッグ・ベネディクトは、焼いたイングリッシュ・マフィンにカナディアン・ベーコンとポーチドエッグをのせ、バターと卵黄のオランデーズソースをかけた料理です。19世紀後半のニューヨークで生まれたとされ、アメリカでは朝食やブランチの定番です。
むずかしそうに見えますが、ポイントは2つです。ポーチドエッグは沸いた湯の火を止めてからゆでること。オランデーズソースは熱くしすぎないことです。マフィンは市販品を使います。
エッグ・ベネディクトとは
英語のつづりは「Eggs Benedict」です。ベネディクトは人の名前で、この料理を初めて頼んだ人の名前とされています。ただ、それが誰なのかには主に2つの説があり、どちらも確かな記録で裏づけられてはいません。
デルモニコスの説
ひとつは、ニューヨークの老舗レストラン「デルモニコス」で生まれたという説です。常連のルグラン・ベネディクト夫人(夫妻とする紹介もあります)が、メニューに目新しいものがないと言って新しい料理を頼み、料理長のチャールズ・ランホファーが考えたと伝えられています。デルモニコスは、自分の店のメニューに、1860年に店で生まれたと書いています。
ランホファーが1894年に出した料理書『The Epicurean』には「Eggs à la Benedick」という料理が載っています。焼き色をつけずにトーストしたマフィンの半分に、厚さ3mmほどの丸いハムとポーチドエッグをのせ、オランデーズソースをかけるものです。
ウォルドーフ・ホテルの説
もうひとつは、ウォルドーフ・ホテル(いまのウォルドーフ・アストリアの前身)で生まれたという説です。1894年、ウォール街の株式仲買人だったレミュエル・ベネディクトが二日酔いの朝にホテルを訪れ、バターを塗ったトースト、カリカリのベーコン、ポーチドエッグ2個、オランデーズソースを頼んだとされています。給仕長のオスカー・チルキーが、トーストをイングリッシュ・マフィンに、ベーコンをハムに替えてメニューに載せたと伝えられています(ハムではなくカナディアン・ベーコンに替えたとする紹介もあります)。
この話は、ベネディクト本人が1942年に雑誌『ザ・ニューヨーカー』のコラム「トーク・オブ・ザ・タウン」の取材で語ったもので、亡くなる1年足らず前のことでした。チルキーは、ウォルドーフの前にデルモニコスで給仕長を務めていました。
ほかにも、1967年にニューヨーク・タイムズの料理記者クレイグ・クレイボーンに届いた手紙で、エドワード・P・モンゴメリーという人が、コモドア(提督)と呼ばれたE・C・ベネディクトが考えたとする説を書いています。新聞では、1894年1月7日の『ニューヨーク・デイリー・トリビューン』に載った読み物の中に、昼食会の献立として「eggs a la Benedict」の名が出てきます。
いつ食べるか
アメリカでは朝食やブランチの定番で、レストランやダイナー、ホテルの朝食やブランチのメニューによく載っています。
エッグ・ベネディクトのレシピ:材料(2人分(4個))
準備 10分調理 25分難しさ ふつう
オランデーズソース
ポーチドエッグ
- 卵(新鮮なもの)4個(Mサイズ・殻なし約200g)
- 水1.5L(直径20cmの鍋で深さ約5cm)
- 酢(穀物酢または白ワインビネガー)(楽天)15ml(大さじ1)
- 塩5g(小さじ1弱)
土台
- イングリッシュ・マフィン(市販品)2個
- カナディアン・ベーコン(ロースハム(厚さ3〜5mm)でよい)(楽天)4枚(約100g)
仕上げ
- 塩0.5g(小さじ1/12)
- カイエンペッパー(一味唐辛子でもよい)(Amazon)0.1g(小さじ1/20)
作り方
バターを溶かしておく
小鍋に食塩不使用バター115gを入れ、弱火で溶かす。泡が出はじめたら火を止め、温かいまま置いておく。イングリッシュ・マフィン2個は、フォークで周りに穴をあけてから手で横半分に割る。
卵黄を湯せんで温める
湯せん用の鍋に水1Lを入れて沸かし、鍋底から小さな泡が上がる程度の弱火にする。ステンレスのボウルを、底が湯に触れないようにのせる。ボウルに卵黄2個分、水15ml、レモン汁15mlを入れ、泡立て器で休まず混ぜる。3〜6分、白っぽくもったりして、泡立て器の跡が筋になって残るまで混ぜる(温度計があれば60〜65℃)。縁で卵黄が固まりかけたら、すぐ湯から外して混ぜる。
バターを加えて乳化させる
ボウルを湯から外し、ぬれ布巾の上に置く。溶かしバター115gを、はじめは数滴ずつ加えては混ぜる。とろみが増してきたら細く流しながら混ぜ続け、全部入れる。鍋の底に残った白い乳しょうは入れなくてよい。塩1gとカイエンペッパー0.2gを混ぜる。固すぎるときは水を5mlずつ、合わせて15mlまで加えてのばす。
ソースを保温する
湯せんの鍋の火を止め、湯気がほとんど立たなくなるまで(約60℃)冷ましてから、ボウルをのせて保温する。ときどき混ぜ、1時間以内に使い切る。湯は熱いので、ボウルは乾いた布巾で持つ。
ポーチドエッグの湯を沸かす
ふたつきの鍋に水1.5Lを入れて強火で沸かし、酢15mlと塩5gを加える。
卵の水っぽい卵白を落とす
湯を沸かしている間に、卵を1個ずつ目の細かいざるに割り入れ、30秒ほどおいて、ざるの目から落ちるさらさらした卵白を捨てる。残った卵を小さな器に1個ずつ移す。
火を止めて卵をゆでる
湯が沸騰したら火を止める。器を湯の面に近づけ、4個の卵を鍋の別々の場所に静かに入れる(高い位置から落とすと熱湯がはねる)。すぐにふたをして3〜4分おく。卵白の上の面まで白く不透明になり、穴あきおたまで持ち上げて黄身を軽く押すと、やわらかく弾むのが目安。白いままのところがあれば湯に戻して30秒ずつ様子を見る。穴あきおたまで取り出し、キッチンペーパーの上で水気をきる。
ベーコンとマフィンを焼く
卵をゆでている間に、フライパンに食塩不使用バター5gを中火で溶かし、カナディアン・ベーコンを両面1〜2分ずつ、縁にうっすら焼き色がつくまで焼く。イングリッシュ・マフィンはオーブントースター(1000W前後)で2〜4分、表面がきつね色でカリッとするまで焼き、断面に食塩不使用バター5gを塗る。
盛りつける
皿にマフィンを断面を上にして置き、カナディアン・ベーコン、ポーチドエッグの順にのせる。卵に塩0.5gを振り、オランデーズソースを1個につき大さじ2ずつかける。カイエンペッパー0.1gを振って、すぐに出す。
ブラックコーヒーや、オレンジジュースと一緒にどうぞ。
料理科学:ポーチドエッグ
沸かした湯の火を止めてゆでる理由
卵のたんぱく質は、温度が上がると固まります。卵白は60〜65℃で固まりはじめ、温度が上がるほど硬くなります。卵黄は62〜70℃で固まります。黄身をやわらかく残すには、卵白の外側を早く固めて、中まで熱が届く前に引き上げます。
ぐらぐら沸いた湯にそのまま入れると、泡の勢いで卵白がちぎれて散り、外側も硬くなりやすくなります。沸騰した湯の火を止めてふたをすると、湯は卵白を固めるのに十分な温度を保ったまま静かになり、ふたの中の湯気で卵白の上の面まで固まります。アメリカの料理雑誌『クックス・イラストレイテッド』を出しているアメリカズ・テスト・キッチンが勧めているのも、この方法です。
新鮮な卵を使い、水っぽい卵白を落とす理由
割った卵の卵白には、黄身のまわりで盛り上がる「濃厚卵白」と、外に広がるさらさらした「水様卵白」があります。水様卵白は湯の中に流れ出して、ひも状のかすになります。
アメリカズ・テスト・キッチンの記事によると、新鮮な卵では卵白の約60%が濃厚卵白ですが、古くなると50%以下に減ります。新鮮な卵を選び、割った卵をざるに入れて水様卵白を落としておくと、丸くまとまったポーチドエッグになります。
酢と塩を入れる理由
酸は湯のpHを下げ、卵白のたんぱく質が固まるのを早めます。塩にも同じ働きがあります。卵白の表面がすばやく固まるので、広がりにくくなります。
ただし、酢だけで効かせようとすると量が増えて、卵に酸味が移ります。酢と塩を一緒に使うと、どちらも少なくてすみます。
料理科学:オランデーズソースの乳化
卵黄が水とバターをつなぐ
オランデーズソースは、溶かしバターの脂を細かい粒にして、卵黄・レモン汁・水の中に散らしたソースです。ふつう油と水は分かれますが、卵黄に含まれるレシチンが脂の粒の表面を包み、粒どうしがくっつかないようにします。この状態を乳化といいます。
バターを最初に数滴ずつ加えるのは、卵黄が包みきれる量の脂だけを少しずつ散らすためです。いきなり多く入れると、包みきれない脂が集まって分離します。水は、乳化を安定させる材料として加えます(アメリカの料理学校の教科書による)。
熱すぎても冷たすぎても分離する
卵黄は湯せんで温めると、とろみがつきます。アメリカの料理学校の教科書(ニコルズ州立大学)によると、ソースが65℃を超えると卵黄に火が通りすぎて、ざらついて分離します。反対に冷えすぎてバターが固まっても分離します。湯せんの湯を沸騰させず、ボウルの底を湯につけないのはそのためです。できあがったソースは、火を止めた湯せんの上で温かく保ちます。
分離したときの直し方
ソースがざらついたり、油が浮いたりしたら、まず熱すぎるのか冷たすぎるのかを見ます。熱すぎれば少し冷まし、冷たければ湯せんで温めます。
それでも戻らないときは、きれいなボウルに水15ml(大さじ1)を入れ、分離したソースを少しずつ加えながら泡立て器で混ぜます。火を通しすぎたときやバターを入れすぎたときは、水に卵黄1個分を加えてから、分離したソースを混ぜ込みます。
半熟の卵について
この料理は、黄身がやわらかく、オランデーズソースの卵黄も完全には火を通しません。新鮮な卵を使ってください。妊娠中の人、小さな子ども、高齢の人に出すときは、ポーチドエッグを黄身が固まるまでゆでます。ソースは、卵黄に湯を多めに加えて71〜74℃まで温める作り方もあります(アメリカズ・テスト・キッチン)。
地域による違い
土台やソースを替えた料理もよく見られます。
- エッグ・フロレンティーン:ほうれん草をのせる(カナディアン・ベーコンの代わりにすることも)
- エッグ・ロイヤル:カナディアン・ベーコンの代わりにスモークサーモン
- エッグ・サルドゥ:ニューオーリンズの料理。アーティチョークの芯とクリーム煮のほうれん草にポーチドエッグとオランデーズソース
手に入りにくい材料の代用
- カナディアン・ベーコン:豚のロース肉を塩漬けにして燻製にした、脂の少ない丸いベーコンです。日本で一般的なベーコンはばら肉で作るので、脂が多く薄いものが中心です。厚さ3〜5mmのロースハムか、ロースベーコンを使います。デルモニコスの説のもとになったランホファーの料理も、ハムを使っています。
- イングリッシュ・マフィン:スーパーのパン売り場で買える市販品で十分です。包丁で切るより、フォークで周りに穴をあけてから手で割るほうが、断面がでこぼこになってバターとソースがよくしみます。
- カイエンペッパー:一味唐辛子を同じ量使います。
- レモン汁:市販のレモン果汁でも作れます。
失敗したときは
- ポーチドエッグがばらばらに散った:卵が古いか、湯が煮立ったまま入れています。新しい卵を使い、ざるで水様卵白を落とし、火を止めてから卵を入れます。
- 黄身まで固まった:ゆで時間が長すぎます。3分たったら1個取り出し、黄身を押して確かめます。
- ソースがざらついた・油が浮いた:湯せんの温度が高すぎたか、バターを一度に入れすぎています。上の「分離したときの直し方」で戻します。
- ソースがゆるくてとろみがつかない:卵黄を温める時間が足りません。湯せんに戻し、混ぜながら少しずつ温めます。
保存
作りたてを食べる料理です。オランデーズソースは作り置きせず、保温は1時間以内にします。
ポーチドエッグだけは、先にゆでておけます。ゆであがったらすぐ氷水に取り、食べるときに軽く沸いている湯に1分入れて温め直し、キッチンペーパーで水気をきります。
前の日までに作っておくときは、冷たい水(4個より多いときは氷水)に取り、水ごと冷蔵庫に入れます。アメリカズ・テスト・キッチンは、冷蔵で3日までとしています。温め直すときは、65℃くらいの湯1.5Lに卵を入れてふたをし、3分おきます。
もっと知りたい人へ
出典
- Saveur「Eggs Benedict」(英語)
- Food Network「Traditional Eggs Benedict」(英語)
- America's Test Kitchen「Easier Eggs Benedict with Foolproof Hollandaise」(英語)
- America's Test Kitchen「Perfect Poached Eggs」(英語)
- America's Test Kitchen「How to Make Poached Eggs up to 3 Days In Advance」(英語)
- LibreTexts(Nicholls State University)「1.8: Hollandaise Based Sauces(Flavors of the Saucier)」(英語)
- LibreTexts「1.4: Coagulation(Chemistry of Cooking)」(英語)
- The Big Apple(Barry Popik)「Eggs Benedict」(英語)
- 6sqft「How an 1894 Hangover Created an Eggs Benedict Controversy in New York City」(英語)
- Wikipedia「Eggs Benedict」(英語)
本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。