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クロック・ムッシュCroque-monsieur レシピ

croque-monsieurクロック・ムスィユー

種類
軽食
地域
フランス(パリ)
分量
4個(4人分)
難しさ
ふつう
公開
大理石のカフェテーブルに、青い縁の白い皿。表面のベシャメルとグリュイエールがこんがり焦げたクロック・ムッシュが2つあり、片方は半分に切られて、ハムととろけたチーズの断面が見えている。横にグリーンサラダ、奥にカフェ・クレーム

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クロック・ムッシュは、ハムとチーズをパンではさんで焼いた、フランスの温かいサンドイッチです。パリのカフェやビストロの定番で、ナイフとフォークで食べる軽い昼食にもなります。

ここで作るのは、いまのパリでよく見かける形です。ハムとグリュイエールをパン・ド・ミ(型で焼いた食パン)ではさみ、上にベシャメルソースとチーズをのせてオーブンで焼きます。表面はチーズがこんがりと焼け、中はとろりと柔らかく仕上がります。

クロック・ムッシュとは

フランス語のつづりは「croque-monsieur」です。クロックは動詞クロケ(かじる、カリッと噛む)の活用形、ムッシュは「紳士」や「〜さん」にあたる言葉です。なぜ「ムッシュ」なのかは、はっきりわかっていません。

1891年の記録と、1910年のカフェの説

名前が文字に残っている古い例は、1891年のフランスのスポーツ雑誌『ラ・ルヴュ・アトレティック』です。イギリスのノーフォークで舟遊びをした旅行記の中で、トーストに使うパン、バター、グリュイエール、ハム、少しのカイエンペッパーでクロック・ムッシュを作り、フライパンで焼く場面があります。グルメガイドのゴ・エ・ミヨは、この記録を紹介して、クロック・ムッシュはフランス生まれではないのかもしれないとしています。一方で、当時のイギリスのレシピに、ハムとチーズを合わせた焼きサンドは見当たらないとも書いています。

一方で、パリのキャピュシーヌ大通りのカフェで、1910年に初めてこの名前で出されたという説もあります。リヨン市立図書館が運営する質問サービス「ギシェ・デュ・サヴォワール」は、料理の本などをもとに、この説を「おそらく」と断ったうえで紹介しています。ゴ・エ・ミヨも、パリのカフェがこれを取り入れたのは1910年代だとしています。

ギシェ・デュ・サヴォワールは、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の第2篇『花咲く乙女たちのかげに』から、ヴィルパリジ夫人が、ホテルにクロック・ムッシュとクリームを使った卵料理を頼んでおいたと告げる一節も引いています。

ベシャメルを使うか、使わないか

1891年の記録にベシャメルは出てきません。ギシェ・デュ・サヴォワールが引く説明でも、バターを塗ったパン・ド・ミにグリュイエールとハムをはさみ、「ときに」ベシャメルを加えて、バターで焼くかグリルで焼く料理とされています。

現代のフランス語のレシピでは、ベシャメルを使うものが目立ちます。ラジオ局ヨーロッパ1の料理記者マリオン・ソヴールのレシピ、そこで紹介されたパリ4区の店「カレ・パン・ド・ミ」の作り方、ニュースサイト「デモティヴァトゥール」のレシピ1本は、どれもベシャメルを使っています。ゴ・エ・ミヨが紹介する店でも、ベシャメルを使う店と使わない店に分かれています。

この記事では、パリのカフェでよく見かける焼き上がりにするため、ベシャメルを使ってオーブンで焼く形を選びました。上にベシャメルとチーズを重ねると、表面がグラタンのように焼け、中のパンは乾かずにしっとりします。ベシャメルを使わない形は、後半の「地域による違い」で紹介します。

いつ、どこで食べるか

フランスでは、カフェやビストロ、ブラッスリー(大衆的なレストラン)の昼や午後の軽食として食べられています。シャルキュトリー(ハムや総菜の店)やパン屋で、持ち帰り用に売られることもあります。

クロック・ムッシュのレシピ:材料(4個(4人分))

準備 30分(ベシャメルを冷ます20分を含む)調理 25分難しさ ふつう

ベシャメルソース

  • 食塩不使用バター(Amazon|楽天)30g
  • 薄力粉(Amazon|楽天)30g
  • 牛乳(冷蔵庫から出したての冷たいもの)300ml
  • 塩2g(小さじ1/3)
  • 白こしょう(パウダー)(Amazon|楽天)0.3g(小さじ1/8)
  • ナツメグ(パウダー)(Amazon)0.3g(小さじ1/8)

組み立て

  • パン・ド・ミ(食パンの8枚切り(厚さ約15mm)でよい)8枚
  • 食塩不使用バター(室温において柔らかくする)(Amazon|楽天)20g
  • ジャンボン・ド・パリ(スモークしていない加熱ハム)(楽天)4枚(約160g)
  • グリュイエール(すりおろす。中に80g、上に70g)(楽天)150g

道具

  • 小鍋(直径16〜18cm)(楽天)
  • 泡立て器(Amazon|楽天)
  • バット(ベシャメルを冷ますため)(楽天)
  • チーズおろし(Amazon|楽天)
  • オーブン(オーブントースターでもよい)
  • 天板とオーブンシート(Amazon)
  • パレットナイフかスプーン(ベシャメルを塗るため)(楽天)

作り方

  1. ルーを炒める

    小鍋にバター30gを入れ、弱めの中火で溶かす。薄力粉30gを加えて泡立て器で混ぜ、2〜3分炒める。細かい泡が立ち、ぽってりしていた生地がさらっとゆるんできたら火から下ろす。色はつけない。

  2. 牛乳でのばして煮る

    冷たい牛乳300mlのうち75mlほどを加え、なめらかになるまで手早く混ぜる。残りを3回に分けて加え、そのつどよく混ぜる。中火に戻して底から混ぜ続け、ふつふつと沸いてきたら弱火にして2〜3分煮る。泡立て器ですくって落とすと表面に跡が残り、すぐには消えない濃さになったら火を止める。塩2g、白こしょう0.3g、ナツメグ0.3gを混ぜる。

  3. ベシャメルを冷ます

    バットに移して平らにならし、表面にラップをぴったり貼りつけて20分ほどおく。指で触れられるくらいまで冷め、スプーンですくっても流れ落ちない固さになればよい。そのあいだにグリュイエール150gをすりおろす。

  4. パンの表面を乾かす

    オーブンを200℃に予熱する。天板にパン・ド・ミ8枚を並べ(一度にのらなければ2回に分ける)、2〜3分焼いて表面を乾かす。焼き色はつけない。取り出して天板ごと冷まし、天板にオーブンシートを敷く。

  5. ハムとチーズをはさむ

    パン8枚の片面に、柔らかくしたバター20gを薄く塗る。そのうち4枚をバターの面を上にしてオーブンシートに並べ、ベシャメル約100g(1枚に約25g)を薄く塗る。ハムを1枚ずつのせ、グリュイエール80g(1枚に20g)を散らす。残りの4枚をバターの面を下にしてかぶせ、手のひらで軽く押さえる。

  6. 上にベシャメルとチーズをのせる

    残りのベシャメル(約200g、1個に約50g)を上のパンの縁まで塗り広げ、グリュイエール70g(1個に約17g)を散らす。

  7. オーブンで焼く

    200℃のオーブンの上段で10〜15分焼く。チーズが溶けてふつふつと泡立ち、ところどころ濃いきつね色になればよい。へらで端を持ち上げ、底が乾いて薄く色づいていれば焼き上がり。上の色が淡いときは、グリル(上火)に切り替えて1〜2分、目を離さずに焼く。オーブントースター(1000W前後)なら、入る数ずつ分けて6〜8分焼き、上が先に焦げそうならアルミホイルをかぶせる。

  8. 2〜3分おいて切る

    天板から皿に移して2〜3分おき、中のチーズとベシャメルが落ち着いてから、ナイフで半分に切る。

熱いうちにナイフとフォークで食べます。グリーンサラダを添え、コーヒーかグラスの白ワインと合わせると、パリのカフェの昼食のような一皿になります。

焼き上がりはチーズとベシャメルがとても熱く、天板も高温です。取り出すときは鍋つかみを使い、すぐにかぶりつかないようにします。

料理科学:ベシャメルを炒め、煮て、冷ます理由

粉をバターで炒めると、だまにならない

ベシャメルは、小麦粉をバターで炒めたもの(ルー)を牛乳でのばして煮たソースです。小麦粉を牛乳に直接入れると、粉のかたまりの表面だけが先に水を吸って固まり、中に乾いた粉が残ってだまになります。先にバターで炒めると、粉の一粒一粒が脂でおおわれるので、牛乳を加えても粉どうしがくっつかず、むらなく散らばります。

炒める時間を2〜3分とるのは、生の粉のにおいを飛ばすためです。ただし、色がつくまで炒めるとデンプンが熱で分解して、とろみがつきにくくなります。白いベシャメルでは色をつけずに止めます。

デンプンの糊化:沸騰させるまでとろみは完成しない

とろみのもとは、小麦粉のデンプンです。デンプンの粒は、水と一緒に温めると水を吸ってふくらみ、粒からほどけ出たデンプンの分子が液体の動きをじゃまして、とろみがつきます。これを糊化(こか)といいます。小麦のデンプンは50〜60℃台からふくらみ始めますが、十分なとろみが出るのは沸騰に近い温度になってからです。ふつふつと沸いてから2〜3分煮るのはそのためで、手前で止めると、焼いたときにゆるく流れてしまいます。

冷ますと固まり、パンにしみ込みにくい

糊化したデンプンの分子は、冷めるとふたたび寄り集まって網目を作り、ソースは固くなります。冷ましたベシャメルは塗りやすく、パンにしみ込みにくくなります。オーブンで温め直すと網目がゆるんで、ふたたびとろりとします。ベシャメルを温かいまま塗ると、パンが水分を吸って底がべたつきます。

料理科学:チーズの溶け方と、パンの焼き色

グリュイエールがなめらかに溶ける理由

チーズは、乳のたんぱく質(カゼイン)の網目に脂肪と水分が閉じこめられたものです。温めると、まず30℃台で脂肪がやわらかくなり、さらに温度が上がると、たんぱく質の網目がゆるんでチーズが流れるように溶けます。料理科学者のハロルド・マギーによると、グリュイエールやチェダーのような硬めのチーズが溶けるのは60〜65℃前後です。水分が少なく長く熟成させたパルメザンは、80℃台まで上がらないと溶けません。

グリュイエールやコンテ、エメンタールは、熟成の途中で網目がほどよく分解されています。そのため、溶けると糸を引きながらなめらかに広がり、ハムとパンのあいだでまとまります。すりおろして散らすのは、全体を同じ速さで溶かすためです。

チーズとパンに焼き色がつくまで

溶けたチーズの表面から水分が抜けると、温度が100℃を超えて上がっていき、たんぱく質と糖が反応して焼き色と香ばしい香りが生まれます。この反応をメイラード反応といいます。上のチーズにところどころ濃い焼き色がつけば、表面の水分が抜けて温度が上がったしるしです。

ただし、焼きすぎるとたんぱく質の網目が縮んで脂が分かれ、チーズは硬く油っぽくなります。焼き時間を10〜15分にとどめ、泡立って色づいたら取り出します。

パン・ド・ミは牛乳や砂糖を含むものが多く、皮のかたいパンより早く色づきます。一方、水分の多いベシャメルに接している部分は、水分が残っているあいだ100℃前後までしか上がらず、色づきません。先にパンの表面を乾かしておくと、底が湿らず、軽く焼き色がつきます。

地域による違い

ベシャメルを使わない形

1891年の記録のように、バターを塗ったパンにハムとグリュイエールをはさみ、フライパンで焼く作り方もあります。ゴ・エ・ミヨが紹介するクレルモン=フェランの店「コントワール・サントラル・デ・バザール」も、ベシャメルを使っていません。

フライパンで焼くときは、パンの外側になる面にバターを薄く塗り、中にハムとすりおろしたグリュイエールをはさみます。弱めの中火で片面3〜4分ずつ、へらで軽く押さえながら焼き、両面がきつね色になって中のチーズが溶ければ焼き上がりです。外側はカリッと香ばしく、ベシャメルを使う形より手早く作れます。

デモティヴァトゥールには、ベシャメルの代わりに、すりおろしたチーズを卵とクレーム・フレッシュ(乳酸発酵させた生クリーム)と混ぜたものを塗り、フライパンで焼くレシピもあります。

チーズとパンの違い

ヨーロッパ1のレシピは、チーズにコンテのほか、カンタルやトムも使えるとしています。ゴ・エ・ミヨが紹介する店では、南フランスのアヴェロン県ロデーズの店がライオルを、リヨンの店がルブロションを使うなど、各地のチーズを使う例があります。パンも、パン・ド・ミではなく、穀物とヘーゼルナッツを入れた自家製の生地を使う店があります。

クロック・マダム

クロック・ムッシュの上に目玉焼きやポーチドエッグをのせたものは、クロック・マダムと呼ばれます。ゴ・エ・ミヨが紹介する店にも、ムッシュと並べてマダムを出す店があります。ノルマンディー地方の一部では、クロック・ア・シュヴァル(馬に乗ったクロック)とも呼ばれるとされます。作るときは、上のレシピで焼き上げたクロック・ムッシュに、フライパンで焼いた黄身がやわらかい目玉焼きを1個ずつのせます。

手に入りにくい材料の代用

  • パン・ド・ミ:フランスのパン・ド・ミは、型に入れて焼いた皮のやわらかいパンで、日本の食パンとほぼ同じものです。8枚切り(厚さ約15mm)が合います。日本の食パンはしっとり柔らかいものが多いので、手順4で表面をしっかり乾かします。厚い6枚切りを使うと、中のチーズが溶ける前に上が焦げやすくなります。
  • グリュイエール:スイスのグリュイエール地方の硬いチーズで、輸入食品店やチーズ専門店で買えます。フランスのコンテや、穴のあいたエメンタールで代用できます。ヨーロッパ1のレシピと、そこで紹介された店も、コンテを挙げています。どれも手に入らないときは、ピザ用のミックスチーズでも作れますが、味が穏やかになり、よく伸びる焼き上がりになります。
  • ジャンボン・ド・パリ:パリで生まれた加熱ハムです。ヨーロッパ1によると、豚のもも肉を塩漬けにしてゆで、骨を抜いて型に詰め、押して冷まして作ります。同じレシピの材料欄では「ジャンボン・ブラン(白いハム)」と書かれています。日本では、ももを使ったボンレスハムのうち、スモークしていないものが近い味です。ロースハムでも作れますが、スモークの香りが強いものは避けます。
  • 白こしょう:元のレシピは「こしょう」とだけ書いています。この記事では白いソースに合わせて白こしょうにしましたが、黒こしょうでも作れます。白いソースに黒い粒が見えるだけで、味は大きく変わりません。

失敗したときは

  • ベシャメルにだまができた:牛乳を一度に入れたか、ルーと牛乳を混ぜ切らないうちに火にかけたのが原因です。火から下ろして泡立て器で強く混ぜ、それでも残るときは目の細かいざるでこします。
  • 焼いたらベシャメルが流れ出た:沸騰させてからの煮る時間が短く、デンプンの糊化が足りなかったか、冷まさずに塗ったのが原因です。泡立て器の跡が残る濃さまで煮て、冷ましてから塗ります。
  • 底がべたっとした:パンの表面を乾かさなかったか、温かいベシャメルを塗ったのが原因です。手順4でパンを乾かし、手順3でベシャメルをしっかり冷まします。
  • チーズが硬く油っぽくなった:焼きすぎです。チーズが泡立ってところどころ色づいたら取り出します。上の色が淡いときは、焼き時間をのばすより、最後にグリルで1〜2分だけ焼き色をつけます。

保存

焼き上がりの熱いうちに食べる料理です。焼いたものを置いておくと、パンがベシャメルの水分を吸ってしんなりします。

  • ベシャメル:表面にラップを貼りつけて冷蔵で2日。固くなるので、ゴムべらでよく練って塗りやすくしてから使います
  • 組み立てたもの(手順6まで):ラップをかけて冷蔵し、その日のうちに焼きます。冷たいところから焼くので、焼き時間は2〜3分長めにみて、色と泡で見極めます

もっと知りたい人へ

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出典

本文とレシピは、上の情報源を比べたうえで独自に組み立て直したものです。